今注目のリスキリング市場で存在感を増す『学びのコーチ』。人×データで築いた現在地とは
2022年10月に開催された「日経リスキリングサミット」に岸田総理が登壇したことをきっかけにリスキリング(学び直し)の認知度が向上した昨今の日本。
同イベントに登壇した『学びのコーチ』事業責任者の柿内 秀賢(かきうち ひでよし)さんは「学びのデザインがどうあるべきかを徹底的に考え、広く世の中に提供できるサービスにしたい」と今後の展望を語ります。
こんにちは!パーソルイノベーション インキュベーション推進部 グロース支援 人事・採用室の小林 日奈子です!
今回は柿内さんに、『学びのコーチ』の事業を推進する面白さ、リスキリングを通して社会貢献したいと考える人が『学びのコーチ』へ集まる理由を聞きました。
※所属部署・役職は2023年1月時点のものです。
伴走型リスキリングサービスとしての独自性を訴求し、地位を確立したい
ーーリスキリング領域が最近、社会的に注目されています。2021年4月に伴走型のリスキリングサービスとしてスタートした『学びのコーチ』の環境は、どのように変化しましたか?
取材や問い合わせの増加から、注目度が上がったことを実感しています。新聞などのメディアで事業が紹介され、事業責任者の僕が日経リスキリングサミットに登壇し、日経クロステックなどでリスキリングに関する記事を連載するようになりました。
その背景には、社会的にリスキリングが注目されているだけでなく、業務提携している各社様が運営するオンライン学習プラットフォーム『Udemy』の方々とのご縁があります。リスキリングで日本を下支えしたいと思っている人たちと、緩やかなコミュニティが形成されてきているのです。
ーーその中で『学びのコーチ』が評価されているのはどのような理由があるとお考えですか?
『学びのコーチ』にキャリアと学びをつなげる思想があるからだと思います。
岸田総理が発表されたリスキリング政策の中にも、キャリア形成を考えながら新しいスキルを学ぶのがリスキリングであると言及されているんです。
しかし「新しいスキルを得て、新しい仕事に就く」と一口に言っても、チャレンジに対する不安と希望との間の葛藤を誰しもが持ちます。更に、部署や職種が変わるなど環境の変化を伴うとその葛藤はより大きくなるでしょう。
彼らが浮足立つことなく自分のキャリアを見据え、修得すべきスキルをしっかりと修得し、変化に備える。それは、社会全体・会社組織全体で見守っていくべきです。
パーソルに30年以上蓄積されたキャリア支援のノウハウを活かし「キャリアとスキルのつながり」を考えながら、リスキリングを成功させる。『学びのコーチ』はコーチとしてその傍らに寄り添うことにこだわっています。こうした姿勢が評価されているものと思います。
リスキリングで自分を磨き、はたらいて、笑ってほしい
ーーリスキリングの浸透は、顧客層にも変化をもたらしたそうですね。
以前はIT企業のプロジェクトマネジャー育成やプログラマー育成、クラウドエンジニア育成ニーズが主でしたが、最近は事業会社でのIT人材育成ニーズが増えています。
事業会社にとって優秀なIT人材を採用することは簡単ではありません。既存の優秀な社員がIT系技術を修得し、新たな活躍を期待したいと考えているようです。
日本の歴史ある企業では、優秀な学生を新卒採用し長い間育成してきました。IT系の人材を中途採用することも有効ですが、会社の理念や文化を理解してくれている社員にIT系人材になってほしいと願われるのは、自然な流れです。
このようにリスキリングの社会的ニーズが高まっています。さらに、国が政策として「今後5年間でリスキリング支援に1兆円を投じる」と宣言したことで各企業の動きが一気に活発になった感があるのです。
パーソルグループでも、大半を占める営業パーソンの中にIT人材を増やすため、2022年10月から『学びのコーチ』と提携してリスキリングを推進しています。
ーー社会全体でリスキリングへの意識が変わってきているのですね。『学びのコーチ』は事業をスタートして1年半が経過し、サービス内容にどのような変化がありましたか?
対応するカリキュラムの幅が広がり、深みも出てきました。
事業スタート時はクラウド資格取得を中心とするカリキュラムでした。最近は、人材育成や中途採用での人材確保が難しい職種の育成カリキュラムも展開しています。たとえば、大手自動車メーカーや大手ITソリューション企業のハイレベルなニーズに応えて、ITプロジェクトをマネジメントできる人材育成のサポートをしています。
『学びのコーチ』のプログラムは、事業会社でDX推進を担っているプランナーなど、専門家に監修してもらっているのが特徴。彼らのおかげで、難易度の高い内容を求める顧客のニーズに応えられています。
そうしてカリキュラムのクオリティを担保する一方で、どの案件でも常に心がけているのは、誰一人脱落させないきめ細やかな声かけをすること。
学習者同士が互いに対話しながら協力して学ぶ「ピアラーニング」を採用して学習者とコーチで意見を交換したり、学びの頻度や学習内容を個別に組んだりして、一人ひとりに寄り添ったサポートを展開しています。
このようにサービスをブラッシュアップし続けて確かな成果を生み出した結果、サービスを開始した2021年4月から約1年半で約500人を支援し、学習継続率99%という実績を作れました。
ーーものすごい成長速度ですね!その要因には何があると分析していますか?
質の高い学習体験の仕組みを提供できていることだと考えています。それを実現しているのが、コーチのきめ細やかなフォローと、データドリブンで実現している効果的な学習体系の仕組みです。
システムを用いて毎週月曜の朝に課題提出のアラートを鳴らしたり、一人ひとりの学習速度や宿題の提出率を算出したりと、学習者の状況をデータで可視化しています。そして、それを元にコーチがアプローチし、人の温かみを感じながら学習が進められる仕組みを整えているのです。
これまで集まった事例をもとに、今後はコンテンツマーケティングを強化していきたいと考えています。新規受注が増えればより多くのコーチが必要になり、コーチが増えれば顧客とのマッチング精度が上がるので、学習体験のレベルが向上する。
良いサイクルをどんどん回していき、サービスを成長させていきたいですね。
ーーでは今後どのようなサービスにしていきたいとお考えですか?
効果的なリスキリング施策を社会に実装できるサービスにしていきたいです。
僕には、このサービスを立ち上げるきっかけになった苦い経験があります。
「当事者が1人で背負い込むことなく、もっとなめらかにリスキリングできる世の中にしたい」と、ずっと考えてきました。
スキルとマインドを両立したサービスプロセスを磨き、テクノロジーと人の力を融合した形で、できるだけ多くの方にお届けしたいです。
その届け方については、BtoB市場だけにこだわらず、市場の状況などを見ながら適切に判断していくつもりです。
企業と個人の変革を、リスキリングで推進したい
ーー『学びのコーチ』のメンバーは、フルリモートで稼働しているそうですね。
そうなんです。仕事で関与するのが業務委託のメンバーが多いため、正社員が出社してもそれぞれオンラインMTGしてばかりであまり意味がないんですよ。だったら出社しなくて良いよね、と。
このはたらき方のおかげで、家族との時間を大切にしながら仕事にフルコミットできてすごく嬉しいです。僕は毎日、息子とバットを振っています(笑)。また、一緒に事業を推進してくれているメンバー達も自分達のはたらきやすさを追求しています。
ーー家庭と仕事を全力で両立できる、素敵なはたらき方ですね。ところで、なぜ『学びのコーチ』には優秀なコーチや監修者が集まっているのでしょうか?
事業内容や志に共感してくれているからだと思います。みんなが口々に言うのが「お金ではない」「経済の成長において大事なリスキリングを通して社会貢献したい」ということです。
ーー中には「柿内さんとはたらきたい」と思ってくれる方も多いそうですね。
本当に、ありがたいなと。そんな思いに応えられるようにしていきたいですね。
ーーその理由は何だと思いますか?
自分で言うのは少し恥ずかしいですが、発想が特徴的だからではないかと思います。
僕個人の考えですが、研修サービスは経営において投資対効果が見通しにくいです。
研修成果でよくある「満足度」も、目的に対する成果を計測する指標として合理性を保つのは難しく、ここに問題意識を持っています。
だからこそ「効果を示す合理的な学習データ」に正面から答えを出しに行きたいと思っています。
その時に、事業者として持つべきケイパビリティは、アナログな価値(講師の質、研修会場の盛り上げなど、属人性の高く再現性の低い要素)だけではないはずです。それ以上にデジタルな価値(学習データを構造的定義、定期的な取得、定量的な計測、検証のために分析する等の、属人性が低く再現性の高い要素)が大事になると思っています。
現にそういったデータを大切に、お客様に対して論理的な報告を心がけているんです。
この話に共感してくれるコーチやカリキュラムプランナーは多く「自分のアナログ価値を、サービスのデジタル価値で増幅してくれる。面白い発想」と前向きに捉えてもらえます。
費用対効果がよく分からないから投資しない、ではなく、費用対効果を出す努力をして人的資本管理の時代要請にきちんと対応する。これが正しい企業姿勢と信じて、お客様と日夜学習成果の可視化に挑戦しています。
ーーそうした先進的な環境ではたらく面白さは何でしょうか?
企業の組織変革や学習者個人の変革を間近で見られることです。
デジタル人材の育成は、さまざまな企業の経営課題に上がっている要素です。そこに深く携わり人材育成を推進することは、顧客の組織変革にも関わります。自社のサービスを通じて顧客の変化に伴走するのはとても楽しいですよ。
そこに欠かせないのが学習者個人の変革。苦労しながらも学び、知識や具体的な資格を得ることで自信を付けていく様を見るのは、僕たちにとって大きなやりがいです。
僕たちと志を共にできる人は、ぜひ一緒に日本でリスキリングを浸透させていきましょう!
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